きのうの仮処分決定は当たり前のことで、特別な感想はなかった。欲を言えば、ニッポン放送(というかフジサンケイグループ)の主張する意味での「企業価値の棄損」が、実際には「フジテレビによる取引打ち切り」というグループ自身の行為によって起きるものなので、こういう自分自身のえり好みを基にしたマッチポンプ的な主張は不当ではないのか、という点についても判断があればよかったと思う。
ぱっと見たところで要点が最も簡潔にまとまっていた毎日新聞の記事を、忘れないように引用しておく。特に「法的判断と経営判断を明確に区別」「どちらの経営が合理的かは、株主によって判断されるべき」という点が重要だと思う。

 ■東京地裁、商法の原則を重視

 東京地裁決定は「経営陣の支配権維持を主目的とする新株予約権の発行は原則として許されない」と明言し、ニッポン放送側が強調した企業価値の維持や放送の公共性確保の主張を退けた。法的判断と経営判断を明確に区別したもので、商法の原則を重視したオーソドックスな判断と言える。

 商法は新株の「不公正発行」を禁じており、その基準として「主要目的ルール」が一般に確立している。ルールは通常は資金調達を目的とし、支配権維持などの手段として利用することは原則認めていない。ニッポン放送側は発行理由に資金調達を強調せず、事実上の企業防衛策であることも否定しなかった。専門家の間では「ニッポン放送不利」の声が強かった。

 決定は「新たな特定の株主が支配権を得ることで会社の利益が著しく損なわれ、会社や株主全体の利益保護に特段の事情があれば原則が適用されないこともある」と述べたが、これは新たな株主が暴力団など特殊なケースに限られるとみられる。決定は「ライブドアの支配で会社の利益が著しく損なわれることが明らかとは認められない」としたうえで、どちらの経営が合理的かは、株主によって判断されるべきだとの見解を示した。

 ニッポン放送側の異議について、仮処分に詳しい裁判官は「最初の判断は重い」と言う。ライブドアが求められた担保は5億円。通常は差し止めによる損害額の1〜3割とされるが、ニッポン放送が予約権発行で得る約158億円、同行使で新たに得る約2808億円に比べ極端に低い額となった。ライブドア側の資金力も考慮されたとみられるが、別の裁判官は「決定を出した裁判官が本訴での逆転の可能性が低いとみている証しではないか」と語る。【坂本高志】
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050312k0000m020155000c.html

報道について言えば、記事にもあるように、会社法をちょっとでも勉強すれば「ニッポン放送不利」という結論は簡単に出せたはず。なのに、あたかも微妙なケース・新手の判断が必要なケースであるかのような報道が続いていた。(そして、裁判所の決定が出ると一転して「妥当、妥当」のオンパレードになった。)このことについての疑問はやはり感じる。