伊東光晴センセの新聞インタビューの中身を備忘のため抜粋。

  • 『一般理論』には、順調な経済の流れに乗っていれば投機も害はないが、大きな渦を巻き、経済社会を飲み込みだしたら、手に負えないものになる、と書いてある。
  • 「大型財政で景気を回復させる」というようなことはケインズならば言わない。財政支出を増やせばその分だけ一時的に生産水準は上がるが、その効果は減衰するものであり、景気を回復させるためには民間投資が誘発されなければならない。しかし、土木建設ではそのような民間投資の誘発は期待できない。サミュエルソンクルーグマンの言うようなしゃにむに政府需要を増大させるやり方では、経済は歪んでしまう。
  • ケインズは派遣労働など想定していなかった。派遣労働(そしてそのあっせん)の公認は、「中間搾取をなくす」という戦後労働政策の原則の崩壊である。導入の理由としてグローバル化が挙げられているが、もしそうなら世界中が導入しているはずである。しかし、このような労働の形態は日本と韓国ぐらいにしか存在しない。
  • ケインズならば、現在の事態の原因は規制緩和にあると考え、たとえば失業者に対しては生活保護相当額を支給し、(派遣労働者となるインセンティブを奪うことによって)派遣労働という形態をやめさせる方策を採るだろう。彼が批判したのは、新自由主義的な経済体制と、それを後押しした経済学である。
  • 不況期は貧困対策など社会変革の好機ともいえる。スウェーデン大恐慌期に低所得者向け公共住宅の建設などに予算を投入した。
  • 今後、先進国では、かつてのニューディール政策が作り出したと同様な中産階級社会への復帰を目指した修正が行われるだろう。
  • あるいは、付加価値税で福祉社会を支える北欧型のモデルか。高齢者と母子家庭には市場経済の歪みが集中している。消費税率を上げてこれらの者に支出したらどうか。